「なでこSMILE」のアニメ感想BLOG

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「サンキュータツオ×春日太一の文化系食わず嫌い克服講座―BLの豊饒な世界 第3回 発展編」に行く

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2016年2月7日(日)に東京は神保町の『東京堂書店』で行われた『俺たちのBL論』刊行記念トークイベント「サンキュータツオ×春日太一の文化系食わず嫌い克服講座―BLの豊饒な世界 第3回 発展編」に行ってきました。

満員の会場のなか行われました当イベントでは、共同著者であるサンキュータツオさんと、春日太一さんによって、昨日土曜日のイベントでクロヤギの方と話された内容の報告や、『まんが道』を今読んでいるというお話。そして本書の内容の軽い復習として、『BLを好きな方のタイプは、こういう風に分かれるのではないか』という説明のあと、途中5分間の休憩ののち、課題図書についての意見交換、さらにはBLを取り巻く社会情勢の今後について、そして会場に配られたアンケートや質問にお答えするという盛沢山なコーナーあと、サイン会まであるという、足掛け二時間半以上に及ぶ長丁場で大変内容の濃いイベントで、大満足でした。
果たしてこれで入場料(ドリンク付き800円)でいいのでしょうか?もちろん本は買わせていただきました。

ちなみに私はこれまで、夢枕獏先生や保坂和志先生、筒井康隆先生のトークイベントに行けども、サイン会の時間が始まった瞬間にまるでフナムシのように姿をくらますほどの、有名人恐怖症であがり症だったのですが、今回のイベントはそもそも熱文字記者のえぴいろさんに誘っていただき、またサイン会も背中を押していただいたおかげで、ようやくご両人にサインをいただくことができました。こちら家宝にさせていただきます。タツオさん春日さん、そして誘ってくださったえぴいろさん、本当にどうもありがとうございました。なんのかんの言ってすごいうれしかったです。

サインをいただくときには、名前を紙に書いて本と一緒にお渡しするのですが(最初は名前を書くのすら、渋っていたという根性のない私)、タツオさんがペンネームを覚えてくださっていたようで、お渡しすると「お、なでこSMILEさん!熱文字の?」と言っていただいて本当にうれしかったです。そんなことまで、覚えててくれるんだなーとまるで『げんしけん』の斑目のように感激しました。
しかし緊張のあまり、そのまま石膏像のように固まっていると、「どう、BLわかってきた?」と聞いてくださり、「今、勉強させてもらってます」と答えると「勉強って」と笑ってくださいました。
それでも、これだけは言わねばと思っていた「水城せとな先生の二作品、恋愛漫画として最高でした」となんとか伝えると「そう、よかった~」とおっしゃってくださいました。
お近くでご尊顔を拝見できて、大変幸せでした。
(ちなみに二作品というのは熱文字でタツオさんがよくお勧めされていた『窮鼠はチーズの夢を見る』と『遡上の鯉は二度跳ねる』のことですが、緊張しすぎてタイトル浮かばず・・・)

と思ったのもつかの間、今度は春日太一さんが目の前にいらっしゃるのですが、もはやこの時点でMPが2くらいしかありません。
なんとか気持ちを振り絞って蚊の鳴くような声で「・・・私も市川崑監督好きです」と言ったのですが、あまりにも声が小さすぎて春日さんに届かず(1メートルも離れてないというのに!おれは女子か!)、よく見ると必死に「粘膜」と書いていらっしゃる最中でしたので、「日常」の桜井先生みたいに汗をかきまくりながらそのまま出てしまいました。
私なんぞのためにサインしてくださいまして、本当にどうもありがとうございました。かー!うれしい!

ちなみにイベントの内容の方ですが、これまた物凄く面白く、5分休憩のころには頭を使い過ぎて、脳みそがぱんぱんでした。
基本はこの本の内容に沿ってお話しされていたようなのですが、私は『WOWOWぷらすと』のアーカイブで初級編を聞いていただけで、本はまだここで購入したばかりだったので未読でした。
それでも「これは面白い!」と思った話がいくつもありましたので、その内容をここで2、3紹介させていただこうと思います。

  • 友情の表面張力がBLである

お話しの中で、「友情」という視点からだけでは捉えきれない現象を、より上位の概念である「恋愛」というフォルダからだとうまく説明できることが可能となる。「解釈可能だということは、すなわち評論として正しいから。だってそれまで説明できなかったわけだから」(春日さん)。というお話は、目から鱗が落ちました。「友情」という意味が拡張して、こぼれおちていく、その受け皿として「恋愛」という言葉で、そのこぼれた部分をとらえなおすことができるということ。これは、私が長年「友情って一体どういうことなんだろう」と一人であれこれと考えてきたことに対する、一種の回答になりうるかもしれません。まだ自分にうまくなじんではいませんが、これは本当に天啓かもしれません。

  • 自分で自分を「めんどくさい女」だとしてとらえてみると、積年のルサンチマンの全体像が見える

春日さんが、自分のなかにある説得しようにもなかなか思うようにならない、もやもやとした気持ちのモンスターの正体についてずっと悩んできたが、これを「何かにつけていろんな疑問に対して、納得しないと気が済まない人」つまり自分を「めんどくさい女」だと仮に思ってみてみると、そのもやもやの輪郭がつかめた気がするというお話をされていて、これまたかなりの衝撃を受けました。もはやこの辺りで自分はただのトークショーではなく、精神分析学の公開討論会を聞きにきたことにようやく気付きました。少し事前の心構えが足りなかったと焦りました。
ですが少なくとも自分が「めんどくさいファン」だということは、このイベントではっきりしました。

  • 課題図書があの「羣青」

タツオさんから、春日さんへのBLに関する「課題図書」のコーナーで画面に映された本が、発売したころ「魂を削って書いているとしか思えない」と帯にうたい文句が出ていたあの中村珍先生の「羣青」だったので、正直かなり驚きました。
表紙を見ただけで、これは生半可な覚悟では買えないなと、昔ヴィレンジバンガードでサンプルだけ少し読んで、自分のなかでまだ買わずに置いてある漫画です。さすが「発展編」どえらいものを投下してくるなと思ってビビりました。このお二人だからこそ成立する討論会であり、課題図書だと思います。このあたり、下手な論客のトークショーだったらもしかしたら自分は居たたまれなくなって、席を立っていたかもしれません。この本気具合、圧巻です。それにしても胃が痛かった!

  • BLという文化が直面する危機についての問題意識

BLというものが、いわゆる小さな蛸壺文化ではなく、もっと広い場所へそれこそ「壁ドン」のように引っ張り上げられ、下手すれば今後の社会情勢や外圧によって、愛のない人たちから虐げられる可能性についてのお話しは、かなり身につまされるものがありました。それはコミケの1日目や2日目の盛況ぶりを見ていれば、自然と推し量れるものです。
もちろん私はBLに関してはど素人もど素人なのですが、エロゲーやエロ漫画、二次創作が好きなものとしては他人事ではありません。
こうした規制によってある一部の文化が永遠に葬りさられてきたり、永久に変更させられてきた例を、漫画に限らず小説や音楽や絵画でもいくつも見てきました。
「こうした場合、相手は理論武装を完璧にしてきているので、こちらも理論武装する必要がある。そうした側面でもこの本は問題意識を持っている」(春日さん)という、大変射程の長い思想をお持ちであるこの発言には、お二人の志の高さを感じました。タツオさんがよくおっしゃっておられる「このエヴァに乗れるのはおれしかいない」ということと、同じ使命感だと思います。私も何かありそうな場合には、立ち上がる覚悟はしているつもりです。

これらに加えて、『なりチャ』という文化のお話や、質問のコーナーで「現実が拡大している一方で、縮小している現実もあるのではないか」というお話も大変おもしろかったです。さながらARのデータ表示に邪魔されて隠れてしまった、ただの現実の景色といった部分でしょうか。春日さんが『切り口』を『斬(ざん)ソロ』と、深読みしてしまうほど拡張された意識のありようなど、さっきの話の具体例がそのすぐ後で出てしまうということなども、まさに生のイベントの面白さの極みと言えるものです。


以上、参考までにご報告いたします。
これまでトークイベントに行ってらっしゃらなかった方は、まだまだ機会があると思いますので、ぜひとも足を運んでいただけたらと思います。
このお二人のお話しはどのイベントのどの回もいつも面白いですが、そのお二人がタッグを組んで一つのことを話すとその面白さはまさに天井知らずです。


ちなみに私はですが、とりあえずゆっくりこの本を読んで、それからあらためて自分なりにBLへの理解を深められたらと思っております。
それに自分の進むべき道は大体見えていて、今『水城せとな』作品を集めているので、それを読んでしまったらたぶん、商業BLに行くのが一番面白そうだなと思っております。
それこそ『純情ロマンチカ』とかでしょうか。『昨日何食べた?』とかは、普通に集めて読んでいます。ただ間違いなくこれまでの趣味嗜好から『闇堕ち』といわれるジャンルには親和性が高そうなので、本当に気を付けようと思います。
異国にやってきて、自分でいきなり料理をするのは不可能なので、まずはガイドブックに載っているレストランのご飯を、ツーリストとしていろいろと食べるところからはじめたいと思います。