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「なでこSMILE」のアニメ感想BLOG

アニメや漫画などについての、自分の思いを記録するブログ

​ 「劇場版 響け!ユーフォニアム」の感想<ネタバレあり>

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​テレビアニメを再編集した劇場版としては、個人的に史上最高の出来栄えで、単体のスポコン青春映画としても、歴史に残る傑作だと思います。以下に、その理由についていくつかの側面から感想を書いてみたいと思います。

1、「台詞の再収録」の効果について

今回の劇場化で、アフレコをすべてやり直しているとのことでしたが、これによって一度見たはずの場面でも新鮮に感じ、緊張感の高まりがありました。劇場用に再構築するための、「新しい意図に沿った、新しい演技」のたまものだと思います。


2、「ストーリー」について

お話についてですが、テレビアニメで放映された全13話を、上映時間103分という、今敏監督の作品のように「アニメ映画としては大変見やすい」長さですが、これを一本の映画にまとめるには、「相当短い時間」に圧縮してありました。劇場版の「まどマギ」が前後編に別れていたのを思い出していただければ、それがどれだけ難しいかわかるかと思います。
それを今作では「目指せ、全国!」というキャッチコピーにあるように、「やる気のなかった部活が、みんなで努力して栄冠を勝ち取る」という、ひとつのテーマに集約させて大変うまく描ききっていました。
具体的に言えば、単に久美子と麗奈という主軸の二人だけにフォーカスして、あとは端折るという感じだけではなく、「キャラクター個々人の、過去にあった人間関係や入部以前の事情」という部分を、丸ごとカットすることで、今この部活に入ってきてからの時間軸や葛藤だけに重きを置いてありました。ですので、久美子の過去につながる問題もカットしてあります。お姉さんのことや中学のときのことなどや、「葵ちゃん」という途中で受験のため退部する人のエピソードなどがそれです。
他にもそれに付随する部長のエピソードや、新入部員の葉月ちゃんのエピソードなど、「絶対外せない、もう一度みたい名シーン」だけは残して、後は全体の分量をバランスよく、一律にダイエットしている感じでした。
これによって、群像劇の感じは薄れますが、初めて見る人にも負担のない、効果的な仕上がりになっていました。

3、「新作カット」について

新作カットの入れ方が大変秀逸でした。
普通、テレビアニメ作品の劇場化などの場合は「あのキャラクターの、新しい演技なりカットが見たい」という需要に応えるために、往々にして「主要キャラの補足エピソード」を新規に差し込むことが多くなります。
ですが今作では、あくまで「演出の道具」として、「ドラマの幅を拡大するため」に、機能していました。
例えば、「瀧先生の登場シーンに眼鏡が光るカット」や、「マドンナの香織を慕う二年生が、教室で何かを決意するシーン」「コンクールの審査発表の間の待ち時間に、他校の生徒が外で集団写真を撮ろうとしている様子」など、完全に「映像による描写」に資する役割を担ったものがほとんどでした。
それ以外は、すべて「演奏シーン」といういわば、見せ場のシーン。中盤の「サンライズフェスでの行進」や、「トランペット対決のシーン」、「最後のコンクールのシーン」など、音楽で言えば「サビ」にあたる部分に、新作カットが大幅に注ぎ込まれていました。


4、「音楽」について

音楽を扱った作品の劇場化ということで、作品内で「演奏」される楽曲も、そのほとんどが再録かリマスタリングされていました。本番にあたる行進の曲や、コンクールの2曲は言うにおよばず、山上での久美子と麗奈の合奏や、トランペット対決でのソロ。また、新入生歓迎の演奏や瀧先生の前での初演奏時のあまりうまくないものまでがおそらく再録されており、その徹底ぶりには本当に驚かされました。
また、今作では劇伴、つまり劇中でドラマを盛り上げるために使用されるサウンドトラックが大変効果的に使用されていました。
103分という短い時間に、エモーションを切り替えさせるため、「シリアスシーン」を除けば、ほぼ全編にわたって音楽が鳴っている状態で、例えば「久美子がオーディションに向けて練習していると、夏紀先輩が校舎裏で練習していて、彼女が吹き終わるとすかさず、張り詰めたテンションの音楽が流れて、久美子の独白が入る」といった感じで、どちらかといえばアクション映画やサスペンス映画などであるような、全編を通して全くテンションを落とさない仕上がりになっていました。
個人的には、行進曲「ライディーン」のロングバージョンで、中盤のブリッジ部分の小太鼓の連打などは本当に素晴らしく、ため息が漏れました。


5、「再編集の巧みさ」について

そして、ここがこの映画での肝になりますが、「テレビアニメのストーリーを、同じ結論にいたる場合でも『映画の表現』として、演出を変えて」いました。
具体的に言えば、「夏紀先輩の描き方」ですが、彼女は時間の都合上、テレビアニメのシーンは大幅に縮小され、その台詞もほとんどがカットされていました。ですが、まず初めに、「やる気のなさそうな先輩の絵を見せる」、そして次に「練習中、久美子が横を向くと練習に参加するようになった夏紀先輩の姿」が差し込まれる、そして先の「4、」で述べた「懸命に練習している先輩を」写した後に、「また同じようにオーディションの結果発表後、久美子が横を向くと、ただ黙っている先輩の絵が写る」。「そして、コンクール直前に、久美子にグータッチをしてくる先輩を見せる」といった具合に、演出方法をテレビと根本的に変えて、映画的なストーリーテリングに変えることで、「無口な先輩と久美子の交流」という同じ結論に至ると同時に、大幅な時間のカットもこなすという、極めてテクニカルなことをやっていました。
そこにさらに、「3、」で述べたような、新作のカットが巧みに織り交ぜられることで、映画のディレクターズカット版のようなアレンジの妙だけでなく、「テレビアニメという原作」の面白さを損なわないままに、新しい独立した作品を生み出すことに成功していたと思います。
むろん、「2、」で述べたように、「背景に関する部分は、名シーンを除いてカット」されているため、香織先輩を除いて、部長の話や田中先輩、サファイアや副担任、低音パートの他の面々などは、完全に後退していましたが、逆に見せ場のシーン、演奏シーンをこの短時間にかかわらず、かなり長くしてありました。
しかし、それら後退した部分にも一目で「背後にドラマがあるんだな」と匂わせるように、一枚絵で見せたり、主軸に関わる部分ではしっかりその人となりがわかるところをチョイスするなど、(例えば、サファイアが失恋した葉月を抱きしめるところや、バス内で緊張する久美子を励ますところなど)、徹底して計算され尽くした編集でしたし、また「葵のエピソード」は完全に消して、そのためにわざわざ新カットを用意するなどといった、「省略するためのプラスの配慮」もなされていて本当にうなりました。


5、「劇場版としてのクオリティーの上昇」について。

さらに劇場版ならではの配慮として、演奏シーンの「楽曲と作画の同期率の高さ」はほとんど異常ともいっていいレベルでした。
音の鳴りと、キャラクターの身体の動き、例えば打楽器の音の鳴りとバチの動きのタイミングといったわかりやすいところはもちろんのこと、管楽器の指裁き、そしてなにより「ブレス」のタイミングで動く「身体の揺らぎ」と、確かに会場でなっている「音の響き方」のシンクロ具合は、ほとんど信じられないくらいでした。それをあらゆるカメラアングルで、音楽の盛り上がりに合わせてカットを切り替えていくという、もう「その場で演奏していると考えるより他に考えられないくらいの完成度」でした。
私は個人的に『涼宮ハルヒの憂鬱』における学園祭のライブシーンが、まずもって歴代一位の演奏シーンでしたが、(むろん絵に合わせて動くという面で考えれば、ディズニーなどのフルアニメーションに及ばないと思いますけれども)「楽器を演奏して、音楽を鳴らしているように見せる」という点で考えれば、「古今東西、フルとリミテッドの違いを問わず本作の演奏シーンがアニメ史上最高」だと感じました。
他にも、ドアを開ける音や荷物の運び出しなどの効果音であったり、車の走行音などにも神経が細かく行き届いていましたし、作画も大画面に耐える絵柄に、全面的にチェックされていて、私の見たところ「集団シーン」でのひとつふたつの構図的違和感や、テレビ版と違って取り払われた「コミカルシーン」の残滓で動きが目立っていることの他は、絵崩れや荒れてみえるものが全くといっていいほどありませんでした。
そして、「4、」で述べましたが、演奏のレベルも全体的に平均してあげており、例えば「香織のトランペットは、模範的ですがうまくまとまった仕上がり」はそのままそのエッジが強調され、「麗奈のトランペットは、そもそもの肺活量からして違うため伸びが違う」という明確な差異が、より大きく付けてありました。また、新入生歓迎の曲なども若干うまく変えてあったのは、より短い時間のなかで、府大会優勝という目標を違和感なく伝えるためではないかと考えています。


これらの点によって、すべてのシーンが、「映画単体の作品」として機能するように考えて作り込まれていました。
そしてできあがった本作は、普通の劇映画の2時間ではなく、103分と上映時間を詰めることで、最後まで行き着く暇のない、クライマックスの連続になっていました。その「集中力が途切れないギリギリの時間」で一気にラストまで走り抜けた感じは、アクション映画のような疾走感のあふれる作品に仕上がっていて大変面白いです。
またエンドクレジットでも、いわゆる「新曲」などを使わず、最終話のエンドクレジットで流れた、オープニングの吹奏楽版の、歌ありバージョンという「あくまでも『響け!ユーフォニアム』という作品」としてきちっと終わらせてきているのも痺れました。
クレジットでの、テレビアニメであった「優勝記念の集合写真」に至る絵の連続で、その記念写真を写さない部分は、好みが分かれるところでしょうが、私は「2016年秋の続編決定!」という文言に繋げるために、あえて外してきたと考えていますのでそれで納得しました。

これらの理由から「単体の劇映画」として、まごう事なき大傑作になっていました。
『劇場版 響け!ユーフォニアム~北宇治高校吹奏楽部へようこそ~』、ぜひ劇場で、見ていただければと思います。


※ ここでの感想に関して、「撮り直し」や「再録」は裏を取っておらず、私の「個人的な認識や知覚」で語っているので、実は「単純にテレビのものを使用している箇所」など、間違いがあるかもしれません。なにぶん劇場という「場」で改めて見たため、印象が変わったせいなどあるかもしれませんので、その点の情報の精度に関しましては、ご容赦ください。


Hibike! Euphonium AMV - DREAM SOLISTER -